魔法使いのテイザ - プロローグ

ドラゴンイーター

魔法使いのテイザ

プロローグ

「あなたは・・・泣いているの?誰のために・・・何のために・・・」

「人の子よ。汝は幼く、罪も穢れもなく、
幸せすら知ることなく、死の淵に立とうとしている。
お前は渇きと空腹を共にした母の亡骸の前に奮い立ち、
そのもののために勝ち目のない闘いを挑み、そして死のうとしている」

「しかし、お前を創造した神も、地上を支配する王も、同じ兄弟である人の子も、
穢れた生まれであるお前のために、泣いてはくれぬ。
ならば、罪深き赤き竜が、せめて、血の涙を流そう」

「人の子よ。お前はすでに目覚めている
その怒りと憎しみを、憎悪の炎に変える魔法の力に
それは殺戮の呼び水にして、絶望の淵で輝く希望の灯
その不幸からうまれる魔力の源は、奴隷のお前にしか、くみ取ることはできぬ」

「人の子よ。この瞬間より、孤独の時間は終わりを告げる
見えるであろう、お前の周りに遷ろう黒き子供たちの姿が
彼らは、現世に未練を残すが故、生きることも、死ぬことも叶なわぬ残恨の魂
お前にとって、その憎しみを分かち合う兄弟であるぞ」

「王と貴族はこの世の幸せと贅沢をむさぼる。
お前たちは彼らが食べ残す屈辱の残飯で、飢えをしのぐか細い命
神に背かれし兄弟たちよ。そのか細き力を合わせるのだ。
しかる後、我とともに、この地上に灼熱の審判を下そう」

「やがて終末が来たるとき、お前の心によって、世界には二つの未来が示される
お前が憎悪の業火を焚くのであれば、聖なる炎によって地上は新生される
お前が慈悲の涙を流すのであれば、その涙は業火を洗い流し、地上は古き姿のまま
未来は預言のまま、預言は人の世の理のまま
希望の夜明けも、破滅の宿命も、人間の意思の向かうところに過ぎない 」

「目覚めるのだテイザよ。汝は赤き竜の巫女であり、この世の煉獄を写す我の眼。」

「テイザさん・・・僕だって普通の人生が欲しかったんだ
誰かを殺すとか、殺されるとか、望んだことじゃない
僕とあなたと瓜二つだ。だから自分を殺したのと同じだ
あなたは誰も救えやしない。自分自身すらも」

「また・・・あのときの夢か・・・」
彼女が目を覚ますと、あたりは暗闇に包まれていた
その暗闇の中、石壁の細い隙間からは、外界から暖かな太陽の光が差し込んでいる
その細い線状の光は、彼女の顔に差し掛かり、その眩しさで目が覚めた