魔法使いのテイザ - テイザとミリー

ドラゴンイーター

魔法使いのテイザ

テイザとミリー

テイザは廊下を歩き、勉強部屋の前に来るとノックした

「俺は聖徒教団のテイザ捜査官だ、村食いの件で君に聞きたいことがある」

ドアをとんとんたたいたが、返事はかえってこない

「・・・中にいるんだろ?入るぜ?」

テイザはドアノブを回して、ドアを開けようとした
空けたドアの隙間から、ひんやりとした空気が流れてくる
クーラーでも設置しているのか?スピラにそんなものあったっけ??
ドアを開けると、机に向かって座っている少女の三つ編みが見えた
ノートで消しゴムをごしごしすると、三つ編みがふるふる揺れる

「あたしが知っていること、オーウェン先生に全部話してある。先生から話を聞いて」

勉強する時間が惜しいのか、ミリーは振り返ることなく喋った
もくもくとノートに向かって鉛筆を動かしている
ミリーは村食いに襲われて、家も家族も焼かれた被害者である
無愛想だったが、発声ははっきりしていた

「オーウェンとは話したぜ。がどうしても本人に聞いておきたい
今のところ、村食いに遭遇して生きてるのはお前しかいねえ
勉強しながらでも、喋ってくれればいい。」

ミリーは机に向かったまま、鉛筆を動かしながら答えた

「・・・じゃあ聞きたいことを言って。あたし、答えるから」


テイザは淡々と質問に答えるミリーの証言をまとめた

ミリー一家は、母ソノコ、姉のメリーの母子家庭3人家族
村食いがやってきたのは深夜2時前後
人々の悲鳴と怒号に目を覚ますと、
見慣れない屈強な男達、村食いの一味が村を蹂躙し
あたりの民家が放火され、中の住人が燻りだされていた

逃げ惑う村人たちは、そいつらに殺されるか、捕獲されてた
ミリー一家はその光景を見て、裏口からこっそり脱出しようと試みる
そこにはコーカスが立っており、一緒に脱出しようと持ちかけてきた
コーカスはオーウェンのお供として、村を後にしたはずだが

しかし母親のソノコは、村食いが闊歩する中、
無傷でコーカスがこの家にたどりついたことを不審に思う
そこでコーカスが村食いの一味だと疑惑を突きつけ、拒絶
それを聞いたコーカスは豹変し、村食いのごろつき2名が、
家になだれこんで、ミリーと姉メリーを捕獲しようとした

ソノコは2児の中年主婦だが、毎日の畑仕事で腕力があり
フライパンを片手に、コーカス一味3名に殴り掛かかった
ソノコはあちこち刃物で刺され出血するも、フライパンでごろつきどもを殴打して
体当たりでコーカス一味を家から閉め出すことに成功
ドア後ろに家具を置いて、再度侵入までの時間を稼いだ

一家は裏口がふさがれた今、どこにも逃げ場所がないことを悟ると、
ソノコはコーカス一味を欺くトリックを試みる
ソノコがコーカス一味と戦い、その間に、子供たちは玄関から逃げた
そう思わせるために、玄関を全開にしたあと、クローゼットに姉妹を押し込んだ

その試みは成功したのだが、ミリー宅は他の民家同様火をつけられ
ミリーとメリーは燻りだされ、自宅から脱出せざるを得なくなる
裏口をめざし居間まで進むが、家が燃えている中コーカスが居座っていた
ソノコはそこで力尽き死んでいたとミリーは証言した

しかしソノコの死体の状況、コーカスが何をやっていたか
姉メリーがどうなったのか、ミリーは喋ろうとしなかった
ここからが本番だな、とテイザは思った


家に火がつけられて燃えてんだろ。
そのコーカスって家でなにしてたんだ?金品でも探してたのか?

そんなもの家にはない。

じゃあコーカスはお前の母親に何かしてたか?ソノコってやつは死んでたんだろ?

そんなの知らない・・・なんでそんなこと知りたいの・・・

俺は村食いを追跡するためにどんな情報でも必要なんだ
あの連中が何をしてんのかどうしても知りたい
略奪集団らしいが、ルッコラみたいな山奥のチンケな村を
大群引き連れて狙うのはおかしい
しかもわざわざ死体を全部焼いてるんだ。奴らは火葬業者なのか?
略奪目的にしても出費と収穫が割りにあわない。

チンケな村なんかじゃない・・・ルッコラって名前がちゃんとある

チンケだろ?地図に書いてあるんだが、ないんだかわかんないような村だ
それもどっかで悪さした雑種が集まって、こそこそと生活してるらしいな
どうせ高価な金品なんて何もないんだろ?
家畜だの農作物だの、そんなもんたいした額になりゃしねえ
村民たって、老人とわずかな子供しかいねえ。
レイプはできねえし、痛めつけるにしても物足りねえよな?

ミリーは拳を握って、わなわなと震えだした

そこでだ。俺は奴らが、黒魔術の実験に来たとみてるんだ
そのコーカスってやつは、お前の母と姉の死体にいたずらしてなかったか?
死体に刃物で、ルーン文字を刻んだりするんだが・・・
お前は本当に殺されるところと、死体を見てないんだな?

なんでそんなひどい事いえるの?みんな村食いに酷い目にあったんだよ

自業自得じゃねえの?
コーカスってやつを助けて村に運んだのはお前の姉らしいな?
そうゆう男がすきなのか?お姉さんは?

え?

お前の姉は、そういう悪い男が好みなのって聞いてんだ
コーカスってやつ、全身傷だらけの若いごろつきだったらしいな

そんな・・・そんなわけないでしょ

そんなあからさまなごろつきを助けるなんて、どうかしてるんじゃねえか?
そいつのそいでルッコラは滅ぼされた
全部お前の姉のせいだよ。
お前のお母さんも同類だな。勇敢に戦ったらしいが、無駄死にじゃねえか
燻りだされるのがわかってて、お前たちを家に押し込んじまったわけだ

お母さんはいったんだ、人にやさしくなれる大人になれって
でもお前にもコーカスにもわかりっこないんだ・・・
お前はあの男と同じ匂いがする。人をだまして、殺して喜ぶ屑の臭い。
根っこからくさりきってる人間の臭いだ

糞ガキ。臭いで人間がわかるのかよ。てめえの匂いなんじゃねえか?
雑種は小便くせえからな

お前みたいなやつに何がわかるんだ!

テイザはその声を聴いた瞬間、脳裏に映像が焼きついた
宇宙に広がる星々の渦、それは万物のエネルギーの源である、マナのらせん
それが目の前の少女を中心に回っている
きらめく星々が、ブラックホールに吸い込まれていくように、膨大なマナの収縮を感じる
テイザは背筋が凍った。この部屋はこいつの魔力で冷やされてたんだ
やばい、このガキは何かするつもりだ!

許さない・・・もう許さない

ミリーは鉛筆を握りしめると、それに冷気が収束していく
アイスピックのような氷のつららが生成された
テイザはその光景をみて直感した。コイツ氷のアニマが覚醒しようとしている
氷をエンチャントして刃物として使う魔法、アイスブレードだ

「お前みたいなやつは死んじゃえ!」

ミリーはテイザの顔面めがけて跳躍した
ミリーの殺意が頂点に達したとき、周りがスローモーションのように遅く感じた
ミリーの動体視力は常人を凌駕し、周囲が鮮明に見渡せた

「チッ」

テイザは舌打ちすると、とっさに腕を前に出して頭部を守った
ミリーの氷の刃の先端は、テイザの手の平に命中
刃の先端はテイザの手の平を突き破り、テイザの顔面を掠めた

「手の平ごと真っ二つにしてやる」
「そいつはどうかな?」

失明して開かないはずのテイザの右目が開いた。
その瞼の奥の暗闇から、燃えるような真っ赤な眼球が姿を現す
その眼球はギョロと瞳孔が細くなり、ミリーを凝視した

「ヒートハンド」テイザが呟く

手の平が真っ赤になり、突き刺さった氷の刀身がジュウと音を立て溶けた
テイザのヒートハンドが、ミリーのアイスブレードを焼溶かした

テイザはすかさずミリーの首根っこをつかまえて、壁に叩きつけた。
小さいミリーは、テイザの片腕の握力と腕力だけで釣り上げられてしまう
テイザはそのままミリーの首を片腕で締め上げる

ぐ・・・が・・・

テイザはミリーを締め上げると同時にマナバーンの魔法をかけた
霊体の炎を飛ばし、目標人物のマナを炎上させる魔法である
無抵抗であれば、マナが枯渇して魔法がしばらく使えなくなる

お前のお袋はどうやって死んだんだ?こうやってしめ殺されたのか?
違う・・・お母さんはそんなにやわじゃない・・・食われたんだあの男に

生で食ってたのか?家が燃えてるのに?焼こうとしなかったのか?

あの男はお母さんを食いながら犯してた・・・もう死んでるのに・・・
家がもう焼け崩れそうなのに、そうやってずっとお母さんを犯してた
お姉ちゃんはそれをみて、鍬を持ってあの男に殴り掛かった

お前の姉もそいつに殺されて、食べられちゃったのか?
下種野郎・・・

ミリーはテイザの顔にペッと唾を吐いた
テイザはまたミリーの首を締め上げた

おいおいミリーちゃん。いい調子だったんだから。最後まで喋れよ
こっちは仕事でやってんだ。てめえが洗いざらい喋ってくれないと困るんだよ

う・・・あ・・・誰がしゃべるかトカゲ女・・・ハゲ頭
あたしは死んでも喋らない。お母さんとお姉ちゃんを侮辱する奴は許さない

そっか、じゃ死んでみるか?

やれるもんならやってみろ
うそうそ。殺しはしねえよ。でもちょっと痛い目にあってもらおうかな

テイザはミリーの首を片腕で絞めたまま、反対の手の指先をミリーの顔の前まで近づけると
指先からバチッと閃光が走った

スパークって魔法だぜ。たいした魔法じゃない。マッチ替わりに火種になるだけの魔法だ
だがこの至近距離で、目に照射するとどうなるかな?眼球が焼けて失明するぜ

あ、あたしは村食いの証人なんだ。あんたに勝手なことはできない
オーウェン先生だって黙ってない

小賢しいガキだな。あんなおっさん怖かねえよ
それに教団がお前みたいな雑種に構うと思ってるのか?

酷い・・・あんたのどこが教団の捜査官なのよ
あたしたちが雑種だからって、なんでそんな酷いことができるの?

お前ら雑種に恨みがあるからだよ
俺の右目がなんでふさがってると思う?
小さいころ、お前みたいな雑種どもにやられたんだよ。
両親の仇だとか家を焼かれた恨みだとか言って、取り押さえられて、
木の枝を突っ込みやがった。
リザードマンは悪党だから懲らしめなきゃいけないとか言ってな
雑種どもは差別されてるとか、虐げられてるとか抜かすが
数がそろうと結局弱いやつを虐めるんだ
お前らは自分が被害者だと思ってるから、原種よりもっと陰湿なことをしやがる

あたしその雑種とは何の関係もない。単なる逆恨みだクソ野郎

俺だってそのリザードマンとは何の関係もなくやられたんだよ
だから俺だっててめえみたいな雑種にやり返さないと気が済まねえ
てめえも俺みたいに右目を失明してみろ。

テイザはもう一度ミリーの目前で、バチッと火花を立てた

お前の姉はどうなったんだ?5秒以内に答えなきゃお前の目を焼く

う・・・結局・・・お姉ちゃんも、コーカスに張り倒されて強引に犯されてた
あの男はお姉ちゃんを乱暴するのに夢中だった
お姉ちゃんは私に目線で合図したんだ。今のうちに逃げろって

それでようやく裏口から逃げられたのか?

逃げれなかった・・・コーカスはあたしが隠れてるのに臭いで気付いてた
あたしを捕まえようとしたんだ。もうだめだと思った

どうなったんだ?言えよ。
テイザはまたミリーの首を絞めはじめた

お姉ちゃんが・・・あの男の股間に吸い付いて、もっと虐めてくれっていったんだ
そしたら、あの男は大喜びで、お姉ちゃんを何度も蹴飛ばした
お姉ちゃんはそれでもあの男にしがみついて離さなかった
あたしはそのすきに、居間を通り抜けて裏口から家から出た
それで丘の上まで走って、村食いから逃げだせたんだ

テイザはミリーを締め上げていた手を開いた。
ミリーはどさっと地面に倒れ、ゼーゼー息を吸った
テイザの手の平から、血がどくどくと地面に垂れている

そのままコーカスとお前の姉は、家ごと燃えちまったのか?

あり得ない・・あのずるがしこい男は絶対生きてる

待てよ。お前は姉が連れ去られたといったな?
でも家から逃げ出したから、その光景を見てないはずだ
そのあと口封じのために殺されたんじゃねーか?

違う・・・あの男は私たちのことを、金になる商品だって言ったんだ・・・
だからお姉ちゃんを殺すわけない・・・

ミリーは地面にへたって、うつむいたまま肩で呼吸している
顔は見えないが、泣いているんだろうか?

お前は結局、親兄弟を見捨てて逃げてきたんだ
復讐だなんて勇ましい事いってるけど、単なる泣き虫野郎だ
魔法を覚えて村食いに立ち向かっても、お前の親兄弟と同じ目にあうぜ?
それが望みなら止めないけどな。

部屋の空気がまたぴきぴきと凍りつくのを感じる
このガキそんな甘くねーなとテイザは思った

私は決めたんだ・・・お母さんとお姉ちゃんの仇を取るんだって
お前も、コーカスも、村食いも、みんな殺してやる!

ミリーは顔を上げて、テイザをにらみつけた
それと同時に、握りこぶしに2刀目のアイスブレードが生成された
テイザは冷や汗をかいた。
まずい。次の斬撃をいなせる保証はねえ

テイザはすかさず、ミリーの目の前に小さな光球を放った
それは小さな光球だったが、突然膨張して破裂音共に強烈な閃光を発した
その光景を凝視していたミリーは目がくらんですくんだ
フラッシュバン。強烈な閃光で目くらましする魔法である

テイザはスタンしている小さなミリーを思いきり
サッカーボールキックで蹴飛ばした
壁にぶつかって大きな音を立てた。
ミリーは気を失ったのか、糸が切れたように木の床に転がり落ちた

そんなに復讐したいなら、お前のお母さんに会いにいってみな

テイザは用事が済んだので退出しようとした
くるっと向き直ってドアノブを回してドアを開ける
するとそこにはものすごい表情をしたライオンの中年が立っていた