魔法使いのテイザ - テイザとオーウェン2

ドラゴンイーター

テイザとオーウェン2

オーウェンは気絶したミリーをベッドに寝かせると、体を調べ始めた

頭に大きなたんこぶがある、首に軽いやけど跡がある
顔を見ると、目の下に大きなくまがあった
ミリーはここの所夜通し勉強を続けていて、ほとんど寝ていなかった
悪夢にうなされているらしく、夜中に悲鳴を上げることもたびたびあった
ミリーは勉強に打ち込み集中することで、思い出に触れないようにしていた
オーウェンは体を気遣ってはいたが、手の付けようがなかった
結局寝不足が原因で、テイザにノックアウトされてしまった

テイザ。下でまっててくれ、ミリーを治療してしばらくスリープで眠らせておく
またケンカになったら困るからね

テイザはミリーの部屋を後にすると、使った魔法の数とシュチエーションを思い出してた
ミリーが飛びかかってきて、手の平を刺された。そこでネガティブマジックが発動
ルビーアイとヒートハンドが一瞬、マナバーン、スパーク2回、フラッシュバン

ルッコラでナイトメアを取り込んでおいたおかげで、それらの魔法のマナを支払うことができた
しかし負の感情が沸きあがり、事情聴取を口実に少女を痛めつけようとした
もっと音便な方法や態度を使うこともできたかもしれないのに。
ミリーがアイスブレードを出して修羅場と化したが、得意の嘘でなんとか切り抜けた

魔法で脅すのが難しいと判断すると、咄嗟に嘘をついて凄んだ
自分が失明した経緯は嘘だし、スパークで失明するのも嘘だ
あの出力のスパークでは瞼を閉じられて、少し火傷する程度にしかならない
またミリーを失明させようとしたのも嘘だ。
オーウェンの教え子相手に、自分はそこまで非情になれない
その甘さがオーウェンの弟子たちを殺してしまったのに
ミリーがあのまま強情な態度に出れば、むざむざと引き下がるしかなかった

テイザはミリーの部屋から出ると、くんくんと自分の臭いを嗅いだ

あの餓鬼は俺の臭いをうそつきで人殺しの臭いだといった
それは当たっているが、本当に臭いで人間がわかるんだろうか?
体の分泌物の成分が、その人間の性格と無関係とは断言できない
犬の獣人はきゅう覚が鋭いので、嗅ぎつけられると厄介だ


テイザは手の平の出血部分に手を当てて、血が噴き出ないように抑えていた

オーウェン。包帯くれないか?ちょっと手を怪我しちまった

僕がいるじゃないか。僕にその手を見せなさい

いや、いいよ。自分で何とかするから

だめだ。血が出てるじゃないか見せなさい

オーウェンはテイザの腕を引き寄せてまじまじと見つめた
血が地面にぽたぽた垂れるので、オーウェンはテイザの手の平に自分の手を添えた

手のひらに穴が開いてるな・・・刃物で刺されたのか?
ちょっとした怪我なんてものじゃないじゃないか

ミリーは氷のアニマの所有者だ。アイスブレードを使ったんだ

オーウェンは血が噴き出ないようにテイザの手の平を両手で包んだ。
そしてヒーリングの魔法を詠唱しながら言った。

やはり氷だったか。アニマの属性はその人間の性格と密接な関係にある
・・・あの子が生き延びたのは冷静さ、復讐に没頭しているのは冷酷によるものだ

村食いの連中はルッコラを燃やし尽くしたんだ。
炎にトラウマがあって、それを見て氷の属性になったのかもしれない

丁度君とは逆だな。君は自分の故郷の村を焼いて逃げ延びた

うん。ミリーは俺に人殺しの臭いがするといったんだ
きっと俺のことを村食いの連中と同類だと思ってる

君がミリーに乱暴して、アイスブレードが覚醒したのは偶然ではないと思う
君は炎のアニマで、ミリーは氷だ。そう反する属性の対立かもしれない
きっと因果や必然だと思うよ
マナと才能に恵まれたミリーと、その反対の君
そして接近戦とアウトレンジという魔法の間合いも正反対だ
実に興味深い

楽しそうに言ってくれるなオーウェン。
俺とミリーがキャットファイトして楽しいか?

とんでもない。だからその傷は絶対に治すよ

オーウェンはヒーリングをかけ終わると
テイザの手に口を近づけ、流れた血をぺろぺろ舐めた

オ、オーウェン。そこまでしてくれなくていいよ
それに俺・・・

黙ってなさい。傷口がちゃんとふさがってるかどうか見たいんだ
それに君が僕に腕を見せようとしなかった理由もわかった

テイザはくすぐったいうえ、なんだか恥ずかしくて見てられなかった

はい。出血は多かったが、裂傷はふさがった。
まだ痛みはあるだろうが、血は完全に止まってるよ

あ、ありがとう先生。

テイザ。君の腕に黒い模様があったよ。
これはナイトメアに憑りつかれて、ノロイに感染している証拠だ
ナイトメアを取り込むのは危険だからやめなさいとあれほど言ったじゃないか
君は昔から悪い癖は全然治ってないようだな
ナイトメアは憎悪に憑りつかれた、不浄の魂なんだぞ

う、うん。だから俺の血は汚いと思う

ノロイはウィルスではないから、血をなめても感染しない
それに君の血が汚いなんてことはないよ。
リザードマンだからといって、卑下するのはやめたまえ
それに昔からこうやって傷を治してあげたじゃないか
今更遠慮することなんかないんだよテイザ。

テイザは治療してもらった手が自由になると、それを自分の胸元に当てた
心臓が大きな音を立てて、鼓動しているのが感触でわかる。
この目の前のライオンの中年が、世界に7人しかいないといわれる
最高峰の魔術師、アークメイジだと言われて、信じる人間がいるだろうか?
アークメイジの前では、貴族のみならず、王族ですら跪くことがある

テイザにとって、オーウェンは目の前にいるが、絶対に手の届かない人間だった
テイザはオーウェンとの種族・身分・才能の差はよくわきまえてるつもりだ
自分がこの人を愛する資格がないこともよく知っている。

上流の村

ミリーは、ソノコは殺された後、コーカスに食われたと言ったよ
どうもコーカスってやつは、人を殺して食うのが好きらしいな

まさか・・・そんなことをしてたのかあの男は
ソノコさんにはあれだけ世話になっておきながら、酷いことを

オーウェン。他にもそんな死体を見たことはあったか?
俺がルッコラで検死したのは事件から2か月後なんだ。
死体は動物に食い散らかされていて、人間に食われたか区別できなかった

正直わからない。
僕がコーカスに襲われて、ルッコラにたどり着いたときには、
遺体はすべて念入りに焼かれていたんだ
まてよ・・・僕は村食いに襲われて、人に食べられた遺体を見たな。
事件の前日なんだが、村の上流から人の死体が流れてきたんだ
その死体は確かに人間に食べられた形跡があった

死体が川から流れてくるのか?ルッコラって面白い村なんだな

笑えない冗談はやめてくれ
ルッコラの上流にはね、小さな村落があるんだ
それが村食いに襲われて、皆殺しされて、川に流されたんだよ
そしてそれがルッコラの村民に発見された

上流の村ってなんだ?どんな村なんだ?

名前もないようなすごく小さい村落だよ。
獣人の中でも特に動物に近い存在、そういう人たちは言葉とかもあまり理解できない
人間の社会では暮らしていけないから、そういう僻地に住んでたりするんだ

そんな小さな村落を、村食いはわざわざ襲ったのか?
その村落ってなんか特別な存在なのか?

そんなことないよ。
その人たちは社会の迫害から逃れるために、ひっそりと暮らしてただけさ
これは推測だが、村食いは地図を見ながら、ルッコラの村を襲いに来たんだ
しかしルッコラの村も僻地過ぎて、地図の表記が正確とは言えない
それで歩き回っても、ルッコラにたどり着かなかった。
代わりに上流の村落について、そこをルッコラだと思って襲ったんだと思う

村食いは証拠を残さないように、念入りに死体を損壊するはずだ
どうしてオーウェンは食ってるとわかったんだ?

ややこしい話になるがいいかね?
流れてきた遺体はそれほど損壊されてなかった
おそらく村食いは、上流の村を壊滅させて、もう付近に村はないと思ったんだろう
それで川に流したんだ。
川に流しておけば魚や動物につつかれて、死体は損壊されるわけだ
それで証拠は残らないと彼らは思った
しかし、実際には川の下流にはルッコラがあって
それを僕と村のみんなが発見したんだ

つまり村食いの連中がルッコラを見落としていて、別の村を襲撃
村食いの不手際で、偶然オーウェン達は遺体を発見できたってことか?

そうなるだろうね

話は戻るが、じゃあなぜあんたのルッコラは村食いに襲われたんだ?
村食いの連中は上流の村をルッコラと勘違いしまま皆殺しにして、
そのまま帰っちまったんだろ?
つまり上流の村が身代りになったおかげで、ルッコラは助かったはず
事実とは異なるが、そう推測できるんだが

面白い推測だなテイザ。それなんだが、うーん・・・
おそらく村に流れてきたコーカスの仕業だろう。
あの男は上流の村の遺体をみて、村食いの仕業だといったよ
つまりルッコラの近くに、村食いが来ていたのに気付いた
そこで何らかの手段でコンタクトを取るか、おびき寄せたんだと思う

その光景は誰か見てないのかな?
ミリーの姉がコーカスを助けて、一家で同居してたんだろ?
ミリーはコーカスの怪しい行動をみてないかな?

元々ミリーはコーカスのことを嫌っていて、あまり近づかなったそうだ
逆に姉のメリー君はあの男と仲が良かったよ。
周りのみんなも結婚式は何時だって、みんな手伝うって、冷かしてたんだ
あの時はみんな幸せそうだったな・・・ちくしょう・・・

メリーか、生きてるのか死んでるかもわからねえ相手だ。どうしようもねーな

テイザ、君はナイトメアと仲良しだろ?彼等が見てるかもしれないよ

うーん、奴らはメリーとコーカスを恨んでるらしい
ナイトメアたちは、メリーが主犯のコーカスといちゃつく姿を見ていて
それで二人を憎悪しているのかもしれない
でもわかるのはそれだけだ。それ以上の情報は引き出せない

オーウェンは突然、はっと声を上げた
テイザの推測が正しければ、村食いはルッコラを見つけることができず、帰ってしまった
しかしコーカスのおかげで、ルッコラを見つけて略奪できた
つまりメリーがコーカスの命を救わなければ、ルッコラも助かっていたのだ
それでナイトメア達はメリーを憎んでいるのでは・・・
いや、まさかそんなはずはない。
ナイトメアにそんなことわかるはずがない・・・

ミリーの証言

オーウェン。
事情聴取の結果なんだが、ミリーは姉が連れ去れてるところを見てないらしい
ミリーは、姉が乱暴されてるうちに、放火された自宅から逃げ出たそうだ

じゃあやっぱりメリー君が生きてる保証はない・・・のか

それはまだわからないんだ
コーカスは姉妹をみて、大事商品だから殺さない、といったそうだ
俺もメリーは連れてかれたんじゃないかと思ってる
俺は検死でルッコラに転がってる死体の咬耗と頭蓋縫合を調べた
その結果老人の死体しか見つかってない
それに、ナイトメアたちはメリーとコーカスをいまだに探してる
ということは、ルッコラにはおそらくその二人の死体はない

大事な商品だと・・・どういうことだ・・・
村食いの連中はメリー君をどうするつもりなんだ・・・

コーカスのセリフから推測すると、奴隷か性奴のどちらかじゃないか

そんなことをしたら教団は黙ってないはずだ
奴隷の売価は禁止されている。
しかもラファエルを荒らしまわっている村食いの被害者なんだぞ
そんな子供を買ったら、村食いの共犯者だと思われてしまう
すぐに通報されて保護されるはずだ

うーん・・・国外やブラックマーケットに流されたら、
ラファエル教団は追跡できないし通報する奴もいないだろう
ルッコラのガキどもを、商品として売ることは不可能ではないと思う

テイザ。老人の死体しか見つかってない、ということは子供の遺体は見つかってないのか?
もしかして全員連れ去られたから、死体がないんじゃ

それはまだわからない。俺が見つけた頭蓋骨は21人分だ。
すくなくもそのなかに未成年と思われる遺体はなかった
四散したのか、まだ発掘できてないだけかもしれない

いいかね?ルッコラの村民数は54人なんだ
そのなかに未成年はミリーをのぞき11人いる
確率論でいけば、君は4人ほどの子供の遺体を発見するはずだ
僕は連れていかれて、生きている。
そう信じるよ。みんな僕の大事な生徒たちなんだ

村食いが山賊で、住処に連れ込んで散々レイプした後、食っちまったのかもしれない

それじゃ商品にはならないだろ。それにルッコラの付近には山賊の目撃情報はないんだ
ルッコラ付近は僻地だから、足を運ぶのは大変だし、襲うようなカモもいない

うーん、確かにそうかもな。
ルッコラみたいな村落を略奪しても、金にならない
やはり子供をかき集めて売り飛ばして、換金してるかもしれない

テイザ。僕は子供たちが必ず生きていると信じているんだ
出なければ、ルッコラという村があったという証は何一つ残らなくなってしまう
生きていたとしても、助けられる望みないかもしれない
それで見つけられたのが、死体の一つであったとしても、ルッコラに返してあげたいんだ
探してくれないか。どんな手がかりでもいいんだ

まあ俺はそういう仕事をやってるのさ
オーウェン、ルッコラの子供のリストが欲しい
名前と年齢と特徴、何の獣人かを書いておいてほしい
上層部に報告すれば、他国にも捜索願いがされるかもしれない
ミリーみたいに逃げ出して、他の村に保護されている可能性も、ほんの少しはあるかもしれない

ルッコラのゴースト

さっき言ったルッコラにでたゴーストなんだが、ミリーの母だと思う
ミリーから村食いに襲われたときの状況を聞いたんだが、
出現する時間と武器、フライパンなんだが、それが一致してる。
そいつはコーカスと刺し違えようとしたが、叶わなかった
そいつの時間は、村食いに襲われたときのまま止まっていて
周りの人間をすべて村食いだと思って、襲い掛かってくるんだ

そんな・・・ソノコさんがなんでそんな目に合わなきゃならない
彼女は自分の子供を守ろうとして、必死に戦ったんだぞ
それがなんでアンデットなんかにならなきゃならないんだ・・・

アンタにとっては最悪かもしれないが、そういう敵は利用できる
オーウェン。ミリーをルッコラに行くように差し向けられないか?

どういうつもりなんだテイザ?ミリーにソノコさんのそんな姿を見せたいのか?

あの辺はナイトメアとか畜生共がいて、その奥にボスのゴーストがいるわけだ
ミリーにとっていわゆる経験値稼ぎってやつになると思う
ソノコは本気で殺しに来るが、たとえ負けたとしても、実態がないから、死ぬわけじゃない
今時期は夏だし、ミリーの能力的に一番快適にルッコラまでたどり着いて野宿できる
村食いと戦う前に少しでも実戦経験が欲しいはずだ

正気でいってるのか・・・自分の母親で経験値稼ぎする人間がいるか
それにルッコラは焦土とかして無人のままだ。かなり危険な場所だろう

復讐にいたる試練ってのはそういうもんじゃねーかな?
自分の母親のあんな姿を見たら、ミリーはぶちぎれるとおもうぜ
つまり余計に村食いを殺すことに固執するし、絶対に容赦しないってことだ
理想的な復讐者なんじゃねーの?

はあ・・・君の会う前の僕なら絶対に反対しただろうな
あんないたいけな少女を復讐者にすることを許されるはずがないとか言って

別にへんにあんたが罪悪を感じる必要はねえだろ
本人が復讐したいっていってんだ。
たとえそれで死んだとしても自己責任だぜ
俺は復讐に必要なものを教えてやってるだけだ

まあとりあえず行かせると仮定して、必要なものを検討しみよう
ミリーは多くの荷物を持てないし、アウトドアで必要になりそうな魔法を網羅させる
スパーク、ライト、セルフヒール、コンパス、アラーム、カメラ、ウォームスなどだろうか?
夏が終わるまでなら、一か月程度ですべて習得させることになるな

8月の真夏に行かせれば、ウォームスはおそらく必要ない
代わりにサンライトが必要だ。あそこはナイトメアがうようよいる
視力が弱ければ、イーグルアイも欲しい

ミリーは僕と違って視力は問題ない。1.5以上あると思う
これで必要な荷物はリュックサック、携帯用食料、水筒、ナイフ、着替え、タオルなんかか
周辺の地図はカメラの魔法で記憶させるから、必要ない
かなり減らせたな・・・しかし水と食料が手に入るかが問題だ

俺はルッコラにたどり着いて野宿していたんだ
水は問題ない。井戸も無事だったし、ルッコラの付近には川もある
食料だが、木の果物と埋っていた畑の根菜類はまだいくつか取れる
しかし家畜や背の高い農作物は全滅している
また魚や肉などの動物性たんぱく質は、ミリーが野生生物をアイスブレードで狩るしかない
家やは中央の教会跡が利用できる
それからぼろぼろの鍋やコップがいくつか拾って使えた
価値が低いしかさばるから、村食いの連中もとっていかなかったんだろう

ということは寝泊まりに必要な、屋根つきの家やと食器類はあるわけだね
ミリーの魔法の習得状況次第で、単独でルッコラに行かせるのは可能かもしれない
しかし・・・行かせるべきなんだろうか?本人が行きたがるだろうか?
自分の焼け落ちた故郷にいって、死んだ母親と戦うんだ

普通、自分の大事な人がアンデットになったら、目を背けるだろう
でも、大事の人だからこそ、その姿を目に焼き付けて、自分の力で何とかしたがるかもしれない
ま、良いか悪いかなんて、俺には関係ねーな